コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2017/03/07

労務単価改訂で処遇改善を

▼国土交通省がこのほど改訂した公共工事設計労務単価(3月から適用)は、全国全職種平均で前回改訂時から3・4%上昇した。6年連続の上昇となり、上昇に転じた2012年度との比較では4割上昇したことになる。技能労働者の処遇改善はもとより、担い手の育成・確保への取り組みがさらに加速することが期待される
▼労務単価は、公共工事に従事する技能労働者の賃金を把握し、実勢価格を公共工事の積算に反映するためのもので、工事費の見積もりにおいて労務費積算の基準となる。実勢価格を反映するだけでなく、政策的な上乗せ措置も講じている
▼ただ、労務単価の上昇分を技能労働者の賃金に反映させるためには、元請け・下請け企業が単価の引き上げに伴う請負価格の上昇分を技能労働者に転嫁する必要がある。常用賃金比では多くの職種で低い水準にとどまっていることから、労働者にまで単価上昇の効果が届いていないとの声もある▼総務省の調べでは、建設業で働く技能労働者数は11年から4年連続で増加していたが、15・16年には2年連続で減少し、再び減少傾向に転じた。国交省でも10年後の技能労働者数は44万人減少するとの推計を昨年6月にまとめている
▼建設投資の規模が現水準で維持されたと仮定し、このペースで技能労働者の減少が続けば、建設業の人手の確保がこれまで以上に難しくなる。労働需給がひっ迫すれば賃金が上昇し、労務単価も中長期的には上昇する可能性が高い
▼ただ労務単価の上昇が続くと、単価の上昇が公共工事のコスト増を招いていると納税者にとらえられる懸念もある。このためにも建設業の生産性向上は喫緊の課題だ。ICT化や機械化の推進はもちろんのこと、ベテランや中堅、若年層を問わず一人ひとりの生産性を高めることが重要となる
▼設計労務単価は、公共工事の入札・契約段階での工事費積算の基礎となる。技術者・技能者の賃金面での処遇が改善されれば、結果的に担い手の育成や工事品質の確保にもつながるに違いない。

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