コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2017/03/14

膨らむ五輪の都外開催経費

▼肥大化の道を突き進んできた近代五輪は、やはり現代にそぐわないものになっているようだ。東京五輪の次の24年夏季大会では、すでに立候補都市の招致断念が相次ぐ。今回の東京五輪の準備状況を見ても、巨額の開催経費の捻出に課題が続出している。今後も五輪が生き残るためには、そのありようを根本的に見直す必要がありそうだ
▼東京五輪の開催経費は最大1兆8000億円と見積もられている。誰がどのようにそれだけの経費を負担するのか、いまだに東京都と大会組織委員会、政府の結論が出ていない。仮設施設整備費用についても、その負担を巡って都と都外の開催自治体の間で綱引きが続いていたが、ここへきて都が負担することを排除しない考えを示した。自治体からは歓迎の声が上がる一方、負担割合などは依然不透明のままだ
▼組織委員会の試算によれば、都外6道県の計13会場の仮設整備費は約494億円。これに整備、輸送、テクノロジーなどを加えると、都外開催費の総額は1700億円を超える見通しという
▼千葉県の開催費を見ると、レスリングなどの会場となる幕張メッセは仮設73億円、輸送42億円、セキュリティー36億円、エネルギー21億円、テクノロジー18億円、オペレーション16億円、その他11億円の計218億円に及ぶ
▼サーフィン会場となる釣ヶ崎海岸(一宮町)は、仮設28億円、テクノロジー47億円とされた。ただ輸送経費は現段階で試算困難として計上しておらず、費用はさらに積み上がる見込みだ
▼仮設整備費だけでも多額だが、バスの借り上げや公共交通無料化などの輸送経費、会場内の民間ガードマンによる警備、来場者に対する検査機器、カメラ設置費などのセキュリティー経費などを積み上げると、いかに巨額の費用が必要かがわかる
▼五輪招致や開催地決定の際には国も地元も盛り上がるものの、冷静になれば、浮かれてはいられない荷の重さに気づかされる。せめて生みの苦しみのあとには、希望や喜びが待っていることを願いたいものだが……。

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