コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2014/02/25

見事だった41歳、7度目の正直

▼成績の重みを年齢で量るのもどうかと思うが、41歳の快挙には頭が下がった。ソチ五輪のノルデックスキー・ジャンプのラージヒルで個人銀、団体銅メダルを獲得した葛西紀明選手である。41歳でのメダル獲得は冬季五輪の日本勢では史上最年長、五輪のジャンプ史上でも最年長メダリストだという
▼今回が7度目の五輪というから、その競技人生の長さは半端でない。幾多の挫折を経てもなお世界と闘い続けるその原動力はどこからくるのか。葛西選手はこう言っている。「何百戦もやっているが、ほぼ負けている。ただ勝つことのうれしさを求め、悔しさをモチベーションにやってきた」。そんな思いが、世界のトップアスリートとして走らせてきたのだ
▼五輪には魔物がすむと言われる。今回も多くの場面で、才能と努力だけでは勝ち抜けない厳しさを五輪は見せつけた。大舞台で勝つには運も味方につける必要があるが、その運も才能や努力とは切っても切り離せない。とりわけジャンプ競技は不思議と、上位選手が飛ぶときに風に恵まれることが多いと聞く。ソチの不安定な風の中でも、葛西選手は風を味方につけ、高く遠く飛んでみせた
▼欧州のジャンパーは国の援助や個人スポンサーから生活費を工面しているため、成績が落ちれば引退を余儀なくされる。しかし日本のジャンプ界は〝社員選手〟が多いため、目先の成績に関係なく協議を続けられる環境が整っている。日本独自の企業スポーツも、その意味では利点が大きい。厳しい時代ではあるが、企業にはできる限り今後もスポーツ選手をバックアップしていってほしい
▼葛西選手のメダル獲得に、テレビ画面を見ながら、「よかった、おめでとう。これで充分だ」と思った。しかし表彰式後のインタビューは、私の思いのはるかに先をいくものだった。「45歳、49歳でも、体力と技術はもっと向上する。あきらめないでいけるところまでいきたい」。スキーの本場欧州でなぜレジェンド(伝説)とたたえられるのか、図らずもその意味を知った気がした。

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