コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2013/09/18

災害

▼東日本大震災以降、災害文学としても注目を集める鴨長明の「方丈記」には、当時「つじかぜ」と呼ばれた竜巻の様子が描かれている。治承4(1180)年に「中の御門京極のほどより、大なるつじかぜ起りて、六條わたりまで、いかめしく吹きける」とあり、家という家で壊れないものはなかったと、その被害の大きさを綴っている
▼今月2日に埼玉県越谷市や本県野田市を襲った竜巻による突風は、国際的な尺度「藤田スケール」(6段階)で4番目に強い「F2」以上の強さだったそうだ。「スーパーセル」と呼ばれる巨大な積乱雲によって竜巻が少なくとも10㎞にわたって縦断したとみられ、住宅の屋根がはがれ、電柱などが折れた被害状況を映像で見るだけでも、その破壊力の凄さに驚かされる
▼「方丈記」には治承4年の竜巻について「これほどひどいものがあろうか、ただごとではなかった。神仏のお告げであろうか」などと書かれているが、いずれにせよ、当時の災害は純粋に天災といっていいだろう。しかし昨今の災害は、竜巻も含めてどうにも天災とは言いがたい。温暖化による異常気象の一つとみて間違いなく、その意味では「人災」とさえ呼べるだろう
▼竜巻のみならず、記録的な高温や少雨、大雨と、今夏の異常気象は尋常ではなかった。この連休にも台風18号が日本列島の広い範囲で爪痕を残した。まさに、地球が悲鳴を上げている証しとも言えるだろう。小手先だけでない、抜本的な温暖化対策を地球規模で進めていかないと、それこそ取り返しのつかない手遅れになる
▼竜巻の被害に遭われた住民の方のコメントに「この世の終わりかと思った」というものがあった。鴨長明は「方丈記」で竜巻のことを「地獄の業の風」と表しているが、妙に重なる気がする。ただし、私たちは今回の竜巻を「神仏のお告げか」などと疑うことなく、そのよってきたるところに気づいている。気づいていながら手をこまねいているだけでは、鴨長明にも、現代人は何と愚かかとあきれられるばかりだろう。

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