コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2013/08/19

消費増税

▼残暑どころか猛暑が一向に去らぬなか、消費増税の足音が着々と近づいているようだ。安倍首相は「未来に向けた適切な判断」を強調するが、依然として慎重論も根強い。消費増税がデフレ脱却と景気回復の芽を摘むことになっては元も子もなく、首相は秋の最終判断へ難しい選択を迫られることになりそうだ
▼今月12日に発表された4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は3四半期連続のプラス成長となり、実質成長率も前期(1~3月期)より0・6%増え、この成長率が1年続いた場合の年率に換算すると2・6%のプラス成長となる。消費税法では増税の目安を、2011~20年度の10年間の平均が「年率で名目3%、実質2%の成長」としており、今回の成長率はこの目安に一歩近づいたといえる
▼その一方で、実質成長率は民間の経済調査会社が予測していた「年率で3%台前半」を下回り、成長のエンジン役と期待された設備投資も0・1%減って6四半期連続のマイナスのままだ。住宅投資も0・2%減で5四半期ぶりのマイナスになった
▼今回の景気回復を引っ張ったのが、1~3月期に続いて個人消費であることも見過ごせない。実質成長率0・6%のうち0・5%分は個人消費で、「アベノミクス」による消費者心理の改善が大きかった。たとえば衣料品の売れ行きも、波及が最終段階に表れ、景気のバロメーターと言われる紳士服が大きく伸びた。しかし、実質GDPを押し上げた要因がこうした個人消費というのも、消費税増税の判断材料としてはいささか弱い気がする
▼日本経済が実際に、消費増税に耐えられる体力を回復しているのかどうか。1997年に消費税を3%から5%に引き上げた際には、アジア通貨危機と深刻な金融不安が加わり、景気が減速し、長期デフレの発端となった。消費税の税収は増えたが、景気低迷で所得税や法人税が減り、肝心の財政再建も遠のいた。今回も賃金や家計に目配りせず、成長率だけで増税に踏み切れば、過去の失政を繰り返すことになりかねない。

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