コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2021/12/22

電気自動車(EV)の行方

▼初代「プリウス」を発売早々乗ったときには、周囲の注目度が驚くほど高かった。1998年当時、街中で同車種を見かけることはほとんどなく、しばらくは周囲の人からあれこれ車について聞かれたりした
▼「プリウス」は、トヨタが世界で初めて量産に成功したハイブリッド車(HV)で、ガソリンと電気を併用する画期的なものだった。加速不足など発展途上だったが、動力用バッテリーの残量が減ると、カメ(亀)マークの「出力制限警告灯」が点灯するのも、いま思えば微笑ましい
▼トヨタはHVのほか、EV(電気自動車)、FCV(燃料電池車)の開発を「全方位」で進める構えをとってきたが、世界で進むEVシフトに対応してEV戦略を大きく進める方針を打ち出した
▼EVの世界販売目標を上方修正し、2030年に350万台まで増やすと発表。従来の1・75倍となり、30車種を展開。EVの開発や生産設備に4兆円を投入するという
▼日本政府は35年までに新車すべてを電動車にする目標を掲げているが、HVやFCVも含まれる。しかし、同じく35年までにEV100%の目標を掲げる欧州連合ではHVやPVH(プラグインハイブリッド)は禁止されている
▼ただ現実には、EVも脱炭素社会の「切り札」とは言い切れない。化石燃料由来の電気を使用して走れば、間接的に二酸化炭素(CO2)を出すことになる。電池生産にも大量のエネルギーが必要で、車の製造から廃棄までを考えれば、CO2は減らせない
▼電気自動車の普及には価格や航続距離、充電時間の壁もある。街のあちこちで充電スタンドを見かけるようになったが、集合住宅では整備が進まずコストもかかる
▼脱炭素に向けては、化石燃料を使わず走るBEV(バッテリー式電気自動車)の動向も注目されるが、トヨタがEVシフトを鮮明にしたことで、電気自動車への流れは一層加速するだろう。少々頼りなくも懸命に走ってくれた初代「プリウス」がますます懐かしく思える時代がすぐそこまで来ているようだ。

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