コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2021/12/14

アートだったレコードジャケット

▼アナログレコード復権の流れが目立つ昨今だが、筆者の手元にはもうレコードプレイヤーがなく、ラックに眠ったままのレコードがまだ二百枚近くある。それらを久々に手に取ってみて、ジャケットの素晴らしさに改めて目を見張った
▼大半が若かりし頃に買い込んだ洋楽ロックで、ロック黄金時代と言われる1970年代のものだ。そのジャケットを眺めれば、自然と楽曲がよみがえる。名状しがたいオーラを感じて、レコード世代としては、CDやサブスクリプション(定額制課金方式)には代えがたいものを感じずにはいられない
▼アーティストはもちろん、デザイナーやレコード会社の熱量も違っていたのだろう。それもそのはず、デザインに著名な美術家がかかわっていたジャケットも少なくない。ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコの初アルバムはアンディ・ウォーホル。ELPの「恐怖の頭脳改革」は、映画「エイリアン」の造形で知られるH・R・ギーガーの手による
▼英デザイン集団、ヒプノシスは、一連のピンク・フロイド作品などで評判をとった。幻想的なイラストで知られるロジャー・ディーンは、イエスなどの作品でジャケット・デザイン界のスターとなった
▼凝った仕掛けのジャケットも多く、ファスナーや回転盤付き、六角形や観音開きなど、今では採算度外視としか思えない作品も次々と登場した。アートと呼ぶにふさわしく、音楽の世界観を視覚的にも見事に表現していた
▼筆者もかつては自室に、お気に入りのジャケットを額装して飾ったりしていたが、ちょっとした画家の作品より〝絵〟になっていたことを今でも鮮明に覚えている
▼CD時代になってもレコードで買った作品を再び購入したりしたが、小型化したジャケットは何とも味気なく、見栄えも悪かった
▼実はそろそろ、眠っているレコードを整理しようかとも考えていたのだが、実物を前にして、それはとても無理な話だと思い至った。やはり、なつかしのレコードはそう簡単に手放せない。

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