コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2019/09/18

見通せぬ台風15号被害

▼台風15号上陸・通過時の風雨は、大げさでなく天の逆鱗にでも触れたようなすさまじさだった。とくにその暴風は、筆者がこれまで経験したことのないもので、家屋が根こそぎ引きちぎられそうな恐怖さえ覚えた
▼今回の台風は千葉市付近に上陸し、同市では午前4時半ごろに最大瞬間風速57・5mを観測した。これは昭和41(1966)年に統計を取り始めてから最も強いという。若葉区にある自宅で筆者が不安とともに眠れぬ夜を過ごしたのも、むべなるかな。未明のうちに過ぎ去ってくれたことは、せめてもの救いだったかもしれない
▼気象庁によれば、観測開始以来で関東に上陸した最強の台風は2002年の台風21号、05年の11号、16年の9号で、上陸時の最大風速が35mというから、これらとの比較でも今回の暴風がいかに猛烈だったかがわかる
▼風速約60mとは時速にすると214㎞で、例えばスカイダイビングの落下速度(時速200㎞)や、新幹線「のぞみ」の平均速度(約220㎞)に匹敵するスピードだという。これほどの強風下では「鉄骨造倉庫などの屋根が浮き上がったり、飛散する」「電柱が折損する」「多くの樹木が倒れる」「コンクリートブロック塀の大部分が倒壊する」などの被害が起きるとされる
▼実際、今回の台風でもこうした被害が県内各地でおびただしい数に及んでいることは、その後の報道などで徐々に明らかにされた。とくに県内では大規模な停電が発生し、全面復旧はいまだ見通せず、多くの人々が極めて厳しい状況を強いられたままだ
▼近年、全国各地で自然災害が頻発しているにもかかわらず、心のどこかで「千葉県は温暖で、地形が平坦で険しい山も少ない」などと油断していた部分がなかったかと、改めて自問してみる。「人間は忘却の生き物」とも言われるが、努力次第で忘れることを忘れずいられるのも人間だけだ。東日本大震災からまだ8年半しか経たないのに、あのときの教訓が薄らいではいまいか、いま一度、自らの胸に手を当てて考えたい

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