コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2012/11/05

「古典の日」制定に思う

▼1年は365日あれど、それぞれに何かしらの記念日があるようだ。あまり聞きなれない記念日もあったりして、こんな記念日があるのかと驚かされることもある。毎朝出がけに「今日は○○の日」と、カーナビに教えられたりもする
▼11月1日が、今年から国が法律で定めた「古典の日」となった。日本の古典文学を顕彰する記念日で、1008年(寛弘5年)のこの日、源氏物語をめぐる記述が「紫式部日記」に初めて出てくることにちなむという。源氏物語千年紀を祝った京都の文化人らが法の制定を求めて成立したという経緯も、いかにも「古典の日」にふさわしい
▼何が古典かと言われれば、定義は広く、文学から美術、演劇、音楽など多岐にわたる。明治の作品も古典に含まれるという。とっつきにくいと敬遠されがちな古典だが、ここは様々な分野の古典に親しみ、楽しむ契機となる日にしたい。文化庁は記念シンポジウムを開催し、各地でも伝統芸能の上演など多彩な行事が催されているが、こうしたイベントにも、古典嫌いの人に関心を持ってもらえるような工夫が必要だ
▼古典は単に古いだけでなく、時代をくぐりぬけてきた強さや、現代では失われた美しさを兼ね備えている。人間の叡智の結晶ともいうべきもので、それだけでも敬意に値する。なぜ輝きを失わず伝えられてきたかを考えるだけでも、現代の大量消費社会を考える材料となろう。古きをたずねて新しきを知ることで、未来に生かせることもあるはずだ。閉塞した現代社会に風穴をあけ、新しい文化を創造するためのヒントが、古典の中に隠されているかもしれない。

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