コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2012/11/12

対策急がれる「盛り土造成地」

▼土砂災害といえば、まず思い浮かぶのが「地すべり」「斜面崩壊」「土石流」あたりだろう。いずれも山地でのリスクが大きいと考えがちだが、ここへきて、土砂災害の一つに「盛り土造成地」がクローズアップされてきた。谷や斜面に土を盛って造成した宅地も、地震で崩れるリスクを負っているというのだ。都市部でもそこここに散在するだけに、雨風の夜などおちおち眠っていられない人も増えるのではないか
▼盛り土造成地は、主に高度成長期に入った1950年代以降、都市部を中心に広がり、「人口地形」とも呼ばれた。もちろん造成地すべてが危険なわけではなく、締め固めが不十分な柔らかい土が急斜面に載り、地下水位が高いといった条件が加わると、崩壊のリスクが大きくなる
▼国は宅地造成等規制法が改正された2006年、危険な盛り土造成地が1000か所あると見込み、10年で半減させる目標を定めたが、自治体による実態把握の遅れや費用負担、住民の合意形成の難しさなどがネックとなり、対策は大きく遅れている
▼47都道府県と20政令指定都市、41中核市、40特例市の計148自治体に対し分布状況を調べるよう要請し、盛り土を支える壁の補強などの対策を求めているが、148自治体のうち、77%の自治体が分布状況の調査に着手しておらず、調査を終えた18自治体でも、このうち9自治体が「住民の不安をあおる」などの理由で公表に慎重だという。発災時の被害を最小限にとどめるためにも、早急な調査の推進や盛り土対策に加えて、徹底した情報公開が不可欠だ。宅地を購入する側も、景観や利便性だけでなく、そうした安全性を見極める必要がある。

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