2016/05/31
コルビュジエ作品が世界遺産へ
▼「近代建築の父」といわれるスイス出身の建築家ル・コルビュジエ(1887~1965)。長らくその名を「コルビジェ」と思い込んでいたが、彼の建築作品群の世界文化遺産への登録勧告に関する記事の多くは「コルビュジエ」と表記されている
▼そもそもCorbusierという名前が珍しいため、ほかにもコルビュジェ、コルブジェ、コルビュゼ、コルビュジュなど、誤記も含めると様々な表記が見られ、フランス語の発音に最も近いのは「コルビュズィエ」だそうだ。ちなみに、本名はシャルル・エドゥアール・ジャンヌレ。コルビュジエはペンネームで、祖先の名からつけられたという。いずれにせよ、われわれが発音するには舌を噛みそうだ
▼コルビュジエは、フランク・ロイド・ライト、ミース・ファン・デル・ローエとともに「近代建築の三大巨匠」として位置づけられるが、日本ではとりわけ抜群の知名度を誇る。日本の建築界でその存在は圧倒的で、丹下健三や槇文彦、安藤忠雄、伊東豊雄らが影響を受ける
▼コルビュジエは、鉄とガラスとコンクリートによる箱型のモダニズム建築を確立。また、ピロティ、屋上庭園、自由な平面、水平連続窓、自由な立面という「近代建築の5原則」を提唱した。都市計画や絵画、文筆など多方面で活躍したことでも知られる
▼今回、世界文化遺産への登録が勧告された建築群は7か国の17資産で構成される。新しい建築の概念を広め、20世紀の世界中の建築に大きな影響を与えたことなどが評価された。7月の正式登録が確実視され、順調なら、彼が世界各国で設計した建築物が一括登録されることになる
▼うれしいことに、構成資産の中には国立西洋美術館(東京都台東区)が含まれる。コルビュジエが来日して設計した国内唯一の建物で、59年3月に完成した。彼が手掛けた本館は地上3階・地下1階で、延べ床面積4399㎡。2007年には国の重要文化財に指定された。国内の建築作品が世界遺産となることを、心から歓迎したい。