コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

  1. ホーム
  2. コラム「復・建」

2015/08/03

消滅の危機にある九十九里浜

▼海水浴シーズン真っただ中だが、先日、ショッキングなニュースがあった。首都圏の代表的な海水浴エリアである本県の九十九里浜や神奈川県の西湘海岸などの一部で砂浜が消えつつあるという。海水浴場の数も減少の一途をたどっており、事態は深刻だ
▼千葉県といえば、真っ先に広大な九十九里浜を思い起こす人も多いだろう。全長66㎞に及ぶ砂浜は、本県の顔ともいえる名勝だ。かつては海岸線の南北にある太東埼と屏風ヶ浦の崖が波に削られて土砂が浜に運ばれ、遠浅の海を形成していたが、1960年代以降、堤防や河川の整備などで潮の流れが変わり、潮に乗って運ばれていた土砂が激減し、砂浜が徐々に消失したとされる
▼県内の海水浴場は30年ほど前には36か所あったが、ほぼ半減し、今年の開設予定は19か所にとどまる。4か所あった匝瑳市では2010年度までに全てが閉鎖。横芝光町の木戸浜では陸から波打ち際まで300m以上あった砂浜が現在では100mほどしかなくなった。海水浴場に軒を連ね、夏の風物詩ともいえる「海の家」も大幅に減少している
▼一宮海岸では、海岸の浸食を防ぐため、県が1988年からベッドランドを設置するとともに養浜も実施し、砂浜の復元を図っている。思った以上の効果が出ていないとの声がある一方、何もしなければ侵食がもっと進行していたという一定の評価もある。待ったなしの現状を思えば、これまでの事業効果の検証も含め、抜本的な検討が必要だろう
▼九十九里浜をはじめとする砂浜は、本県にとって有数の観光資源であり、その経済効果も大きい。高潮被害を防ぐ防災面からも重要であることは言うまでもない。一説によれば、九十九里浜は6000年の歳月を経て形成された。それがわずか数十年のうちに消失の危機に瀕し、その原因の多くが人間の手によって自然の営みを阻害された結果となれば、このまま放ってはおくわけにはいかない。かつての豊かな砂浜を取り戻すために、いまこそ知恵を絞る必要に迫られている。

会員様ログイン

お知らせ一覧へ