コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2013/04/08

国民栄誉賞・長嶋氏で思い出すこと

▼国民栄誉賞の授与が決まった、長嶋茂雄・元巨人監督と元大リーグ選手の松井秀喜氏。「選考基準があいまい」とか「長嶋氏は遅すぎるし、松井氏は早すぎる」などの声も聞かれるが、ここは理屈抜きに、今回の「師弟」同時授与を喜びたい。野球人としてのスタイルだけでなく人生観も共有し、苦楽を共にしてきた本人たちにしかわからぬ思いもあるだろう
▼国民栄誉賞の基準は「広く国民に敬愛され、社会に明るい希望を与えることに顕著な業績があったもの」。とりわけ長嶋氏は、ミスタープロ野球と呼ばれるなど、野球界が産んだ国民的なスターであり、その明るくおおらかな人柄は同賞の趣旨にふさわしい
▼「巨人は嫌いだが、長嶋は好き」という人も多いように、垣根を超えて愛される、戦後最後で最高のスーパースターともいえる。熱いプレーやファンへのサービス精神、ユニークな発言など、何かにつけ好感をもって注目を集めた
▼長嶋氏は佐倉市の出身で、千葉県ともゆかりが深い。出身校も県立佐倉第一高校(現在の佐倉高校)だ。私事になるが、筆者も同校の出身で、つまりは氏が偉大な先輩ということになる。私の高校在籍当時は氏もまだ現役選手で、われわれ在校生にとって、その存在は何とも誇らしかった。校庭にあるバックネットは氏から寄贈されたものと知って、特別な思いでそれを眺めていたものだ
▼氏の引退セレモニーが行われたのは、1974年の10月14日。そのセレモニーのスピーチで、あの有名な「わが巨人軍は永久に不滅です」という言葉を残した。私がそれを見たのは高校の下校途中、古めかしい国鉄佐倉駅(現在のJR佐倉駅)の駅舎内待合室に据え置かれたテレビだったと記憶する。調べてみると、確かにその日の、秋の夕日がほとんど沈んだ午後5時ごろとある。マウンドに立ち、スポットライトを浴びるなか、この名文句を残してファンに別れを告げた氏の姿が、いまでも筆者の記憶によみがえる。わが青春の中で、ひとつの光が消えたかの寂しさを感じたものだ。

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