コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2014/09/02

受験界に押し寄せる少子化

▼大手予備校「代々木ゼミナール」の大規模なリストラのニュースには、押し寄せる少子化の波を実感させられた。少子化に不況が重なり、現役志向が強まったことが要因とみられるが、受験業界にとってはまさに激震といえよう。受験生や高校の進路指導などへの影響も懸念される
▼何といっても、そのただならぬリストラの規模に驚かされた。17都道府県で展開する29の校舎のうち7割にあたる約20校舎を来春にも閉鎖し、大学受験生を対象とする主な全国模擬試験も廃止するという。「3大予備校」の一角として、かつては飛ぶ鳥を落とす勢いだった代ゼミの今回の決定に、さまざまな感慨を誘われた方も多いだろう
▼かく言う筆者も、大学受験で現役、浪人時代を通してお世話になった身である。26階建ての「代ゼミタワー」もできる以前の、全国展開に乗り出してまもないころの話だが、そう広くない代々木の校舎などはいつも受験生らでごった返していた。英語の西尾孝、古典の野村嗣男といった有名講師の先生方には、受験勉強を超えた学びの面白さを教えていただいた。十代の多感な時期ゆえ、楽しい思い出も苦しい思い出も、まさに青春の一ページとして今も鮮やかによみがえる
▼受験を取り巻く環境も当時と今では雲泥の差だ。20年ほど前の大学入試者は現役2に対し浪人1だったが、いまや6対1だとか。実際、筆者の大学在学中には周囲に2浪以上の学友も珍しくなかったし、卒業後には予備校講師に収まった者もいる。彼ら受験業界の関係者にとっても厳しい時代だろう
▼今回のリストラは、受講生にはまるで寝耳に水。従業員や講師に今後の方針をきちんと説明し、受講生や保護者への説明責任を果たすことで、受講生たちに不安を抱かせない配慮が求められる
▼代ゼミ伝統の校則「日々是(ひびこれ)決戦」。筆者も遠い日にはこの校則を胸に受験勉強に励んだ。今は皮肉にも、少子化と格闘する予備校そのものが、この校則を経営則に変えて実践していく必要に迫られている。

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