コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2013/11/11

高速道路跨道橋

▼高速道路をまたぐ跨道橋約4500か所のうち635か所で老朽化などの点検が一度も行われていないことが、会計検査院の調べで明らかになった。現在の耐震基準に満たない橋も約1500か所に上るという。万一、老朽化した橋が高速道路の上に落ちたら、と考えるだけで、背筋が寒くなる
▼未点検635か所のほかに、記録がなく点検したかどうか分からない橋が548か所あり、これらを合わせると全体の4分の1に達する。驚くべき数字で、盲点として見過ごされていたとしか思えない。今回の調査結果を受け、検査院は高速道路会社に対し、跨道橋を管理する自治体との情報共有の強化など橋の維持・修繕を進めるよう求める方針だが、ここでも縦割り行政の弊害が表れた格好だ
▼跨道橋は、高速道路が造られ市町村道等が分断された場合などに、高速道路会社が建設。完成後は大半が市町村など自治体の資産となり、管理責任も基本的に自治体が負う。しかし、このことを十分自覚していない自治体が少なくないという。規模の小さな自治体がインフラの維持管理・更新を行う上でネックとなるのは、ほとんどが予算と職員の不足といっていい。今後は、防災・安全交付金の積極活用など国の支援が必要不可欠となる
▼検査院が跨道橋に着目したのは、笹子トンネル事故後、劣化したインフラが全国で顕在化したため。コンクリ片一つ落下しても重大事故につながりかねず、大地震などで橋が落下すれば、高速道路での救援物資輸送が滞ることなどを事前防止する狙いがあったようだ
▼検査では、すでに封鎖された跨道橋がゴミ捨て場のように使われていた事例もあり、地域住民の利便性に寄与していない橋も多くあるとみられる。利用率が低いために予算面での優先度が低くなり、点検を怠る原因にもつながったのではないか
▼問題はむろん跨道橋にとどまらず、むしろ今回の調査結果を公共インフラの老朽化全般に通じる教訓としてとらえるべきだ。災害時には生命に直結する問題として、対策を急ぐ必要がある。

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