コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2022/11/08

目を見張る核融合エネ研究

▼地球温暖化などの環境問題が深刻化する中、未来のエネルギーとして注目される核融合エネルギーの研究が各国で進められている。日本でも最先端の研究が進められており、その拠点の一つ、核融合研究所(滋賀県土岐市)を視察する機会があった
▼同研究所では将来の核融合発電の実現を目指してプラズマ研究が行われている。プラズマ実験を制御室から遠隔操作で行う様子からは、緊張感とともに研究者の情熱がガラス越しにも感じられた
▼人類のエネルギー消費量は増加の一途をたどり、地球温暖化による様々な現象が人類の存続を脅かす深刻な問題となっており、化石燃料に代わるエネルギーの必要性が増している▼ただ太陽光発電や風力発電は、産業や都市機能を維持するほどの大規模な発電が困難で、燃料電池には燃料の水素を作るためのエネルギー源が必要になる。それに対して核融合エネルギーには、資源枯渇の心配がなく、環境負荷も小さく、大規模な発電が可能というメリットがある
▼核融合エネルギーは、重水素と三十水素(トリチウム)を核融合反応させるときに発生するエネルギーを利用して発電。燃料に必要なこれらの原料は海水中に無尽蔵に含まれる。3ℓの水と0・3gのリチウムから日本人一人当たりの年間電気使用量を発電でき、実現すれば、まさに夢の新エネルギーとなる
▼核融合反応を起こしてエネルギーを取り出すには、1㎤あたり100兆個以上の密度のプラズマの温度を1億度以上にして1秒以上封じ込めなければならないが、同研究所では、重水素実験ですでに1億度を超える高温プラズマの生成技術を確立。今後は、高温プラズマ制御に必要な乱流やプラズマ中に発生する波のメカニズムの解明などがカギとなる
▼門外漢にはなかなか肌感覚で理解しにくいが、同エネルギーの可能性はよく理解できる。説明にあたった広報担当者は、諸外国に比べ低い予算額などに危機感を示したが、世界をリードするには手厚い資金が必要になることは言うまでもない。

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