コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2022/02/15

佐渡金山と無名異焼

▼佐渡といえば、真っ先に金山が思い浮かぶ。その佐渡金山遺跡(新潟県佐渡市)が、日本政府からユネスコの世界文化遺産に推薦された。江戸時代に伝統的な手工業だけで世界屈指の産出量を誇った金山の文化的な価値は言うまでもない
▼強制労働の現場と主張する韓国の反発もあり、2023年の登録までに乗り越えるべき課題は多いが、登録へ向けた取り組みが新たなフェーズに入ったことは間違いない
▼佐渡には金山以外にも多くの文化があり、無名異焼もその一つだ。しかも、この焼物も金山と密接にかかわる
▼無名異焼は、酸化鉄を多量に含んだ赤土(無名異土)を原料とする焼物で、1819年に伊藤甚平が佐渡金山の坑内で産する無名異を用いて楽焼を製造したのが始まりとされる。明治時代に入ると、三浦常山や伊藤赤水らの手によって、高温で硬質に焼成する現在の無名異焼が完成した
▼技術的には、無名異土を、水を使った精製してから絹目に通すため、他の陶土より粒子が細かくなり、収縮率が大きいのが特徴。焼成後にも金山の精錬滓で磨き、独特の光沢を出す。完成した焼物は堅く焼き締まり、叩くと金属音を発し、使用するほどに光沢を増す
▼無名異焼は2003年に重要無形文化財の指定を受け、同時に5代伊藤赤水が重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された。ほかにも、同じ佐渡・無名異焼の窯元に生まれた陶芸家・三浦小平二が、1997年に「青磁」で人間国宝に認定されている
▼伊藤赤水はインタビューの中で無名異焼について「非常に重いもの」と述べ、「そのジャンルの中で、いかにオリジナリティーを発揮するかが重要」と語っている
▼佐渡島は順徳天皇や日蓮、世阿弥など中央政権に抵抗した人が流されてきた「遠流の島」で、「結果として中央の風俗が伝わり、文化的に非常に高度で自由なものが育まれ、しっかりと根付いた」と力説している
▼今回の世界文化遺産への推薦が、金山だけでなく、佐渡の豊かな文化を知る契機となることを期待したい。

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