コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2018/03/13

カタルーニャ独立運動にみる矜持

▼独立の是非を問う住民投票を受けて昨年10月に独立宣言を行ったスペインのカタルーニャ自治州。一時は混乱状態が続いたが、だいぶ沈静化し、街は平静を取り戻しているとも聞く。ただ、歴史的に中央政府への不満が強い地域だけに、いつまた独立運動が再燃するかは予断を許さない
▼「多数」の論理や国家権力にひるまないカタルーニャの精神風土は、当地の芸術や芸術家の営みの中にも顕著に表れている。ピカソやダリ、ミロといった画家をはじめ多くの芸術家を輩出した。たとえば、ドイツ空軍による無差別爆撃の惨状を描いたピカソの「ゲルニカ」は、スペイン内戦中の1937年に描かれた。理不尽な仕打ちへの憤りが創作のエネルギーになったと言われる
▼ダリの作品にも「茹でた隠元豆のある柔らかい構造」など、スペイン内乱の不安を察知して描かれたものがある。また、建築家のガウディにもカタルーニャの反骨精神が示された作品が少なくない
▼侵略された歴史のない島国の私たちには理解しづらいが、こうしたカタルーニャ州の独立熱は、弾圧の歴史に培われた独特の気質によるところが大きい▼カタルーニャは商人の国で、中世以降、スペインとフランスの間に立って賢く立ち回り、地中海の広い範囲の覇権を握った。自分たちの知恵と能力で独自の文化圏を築いてきた誇りを持つことで、精神を支配されることへの嫌悪感が人一倍強い気質を生んだ。1714年にスペイン帝国の統治下に入って以降は、フランコ政権を経て現在まで抑圧が続いていると考える人が多い
▼カタルーニャ語はスペイン語以上に地域に浸透していたが、フランコ独裁下では公式の場での使用を禁じられていた。しかし人々は日常生活で丁寧に使い、公用語として子どもたちに伝える努力も続け、歴史的な復活を遂げた
▼独立に関しては、現地でもさまざまな意見があり、必ずしも一枚岩ではないが、カタルーニャの独立熱を考えるとき、長く他国支配に苦しんできた人々の矜持を忘れることはできない。

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