コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2012/10/16

ノーベル賞で期待膨らむ再生医療

▼山中伸弥京都大学教授のノーベル医学生理学賞受賞に沸いた先週の日本列島。50歳にしての快挙は、今後の再生医療の実現へ大きな期待を抱かせる。うつむきがちな今の日本に勇気を与える、うれしい出来事でもあった
▼会見で国の支援や周囲の理解・協力への感謝を強調されるあたり、親しみやすさも感じさせてくれた。お見受けする限り、外見も近づきがたさとは無縁の清新な風情である。ただしその研究成果は、常識にとらわれない大胆な手法と幸運から生まれたようだ
▼受精卵を壊して作るES細胞には倫理的な問題がつきまとうことから、その逆をいく“逆転の発想”でiPS細胞の作製に成功した。そこには、人のまねをしない信念があり、常識を絶対視しない姿勢があった。山中教授いわく「知識が邪魔をすることもある」
▼基礎研究に入る前には整形外科医として医療の現場に立った経験もあり、研究成果を一日も早く実用化させたいという思いも人一倍強いようだ。「iPS細胞の成果も患者さんに届かなければ何の意味もない」「人生の目標は、iPS細胞の技術をベッドサイドに届け、多くの患者を救うこと」と語っている
▼山中教授は、ヒトの治療に使える高品質のiPS細胞を来年早々にも外部の研究に提供し始める方針を明らかにしている。今後の実用化に向けては、国を始めとする一層の支援が必要だ。患者の痛みを知る研究者の活動を、国を挙げてバックアップしていきたい。

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