コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2016/01/26

申年に恐ろしき類縁

▼2016年も、はや1か月が過ぎようとしているが、今年の干支、申(猿)は、昨年の羊に比べるとさすがに露出度が高いようだ。同じ霊長類として人間と近しく、ユーモラスなキャラクターで何かと絵にもなりやすい
▼どういう偶然か、筆者が新年早々に読んだ小説も、猿の登場する話だった。ウルグアイの作家オラシオ・キローガの「転生」という短編(国書刊行会刊「野生の蜜」所収)で、ここでの猿はテナガザルだ。ただしこのテナガザルが何とも恐ろしい
▼動物園にいるこの猿は何と言葉を発するのである。「川が増水している」「扉を開けろ」などと。物語の主人公ボースも、自分だけに発せられるその言葉の意味が分からない。分からないが、なぜか遠い記憶を震わされる
▼事態の核心に迫れず、猿と縁を切るのも難しいと感じたボースは、思いがけない行動に出る。動物園から猿を盗み出すのだ。策を弄してまんまと盗み出すことに成功するが、、その猿を自分の部屋の一室に閉じ込めると、ボースは次第に変調をきたし始める。その変調ぶりがすさまじいのだが、そこの詳細ははぶくとして、要は、ボースは次第に錯乱して猿化し、猿は逆に…
▼ネタバレにはなるが、三千年前にこの猿は人間だった。そこでボースの先祖とインドの同じ村に住んでいた。ただし、片や支配階級バラモンの選良、片やボースの先祖は牛追いだった。その選良はボースの祖先によくしてやったのに、洪水が村を襲ったとき、河を鎮めるために生贄にされた。その復讐が三千年後になされたというわけだ
▼タイトル通り転生ゆえの復讐劇だが、それが何とも言えぬ怖さや不気味さを感じさせるのも、やはり猿と人間の特別な関係性によるものだろう。有名な映画「猿の惑星」もそうだったが、何かが違えば立場が逆転することもあり得ぬことではない。猿まね、猿芝居、猿知恵などと、かんばしくない言い回しに使われる猿ではあるが、そんなイメージだけで見ていたら、とんだしっぺ返しを食うかもしれない。

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