コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2015/04/06

古社とつながる海洋再生エネ

▼千葉県海洋再生可能エネルギー導入可能性研究会がこのほどまとめた報告書の冒頭には、本県と海との古くからの歴史的なつながりを示す2つの神社の名前が挙げられている。銚子市の渡海神社と勝浦市の遠見岬神社である。海洋再生可能エネルギーをめぐる今後の方向性を考える上でも無駄ではなかろうと、両神社の縁起を少し調べてみた
▼渡海神社は犬吠埼の南側に鎮座する。709(和銅2)年の創建と伝えられ、当初は外川浦日和山(現在の銚子市外川町1丁目)にあったが、津波により現在地に遷座。遷座の時期は976(貞元元)年とも1674(延宝2)年とも言われる。海の神である大綿津見神(おおわたつみのかみ)を祭り、航海と漁業の守護神として信仰を集める
▼一方の遠見岬神社は、浜勝浦(上総国夷隅郡)に鎮座する。勝占忌部須須立命(かつらいんべすすたつのみこと)が八幡岬突端の富貴島に社殿を建て、開拓の祖神として祭ったのが起源とされる。しかし、1601(慶長6)年の大津波で岬の突端にあった社殿は決壊。「宮の谷」に社殿を再建し、さらに1659(万治2)年に現在の「宮山」に遷座したと言われる。同社には、海での漁や航海の安全を祈る「船霊(ふなだま)様」への信仰が古くから残っている
▼期せずして両神社とも、津波によって創建の場所から高台の現在地に移された経緯がある。このことは、三方を海に囲まれる本県が常に津波の脅威にされられてきた証左とも言えるだろう
▼研究会の報告書では、海洋再生可能エネルギーの適地を求めやすい本県に国内屈指のポテンシャルがあると評価し、太平洋岸の沿岸近くに洋上風力発電や波力発電の導入が期待できるとしている。海域利用と共存した形での大規模ファーム構想がうたわれ、沿岸部にはエネルギーを活用した様々な産業が立地する将来像も示されている
▼考えるほどに夢は膨らむが、ここでもまた、地震や津波のリスクと隣り合わせであることを忘れてはなるまい。海とつながりの深い神社の由来が、そのことを教えてくれているように思える。

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