コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2015/03/09

著作権「報道利用」と「引用」

▼報道に携わる者にとって避けて通れないのが著作権だが、その解釈は時とともに微妙に移ろっているようだ。その最大の要因は何といってもネット社会の深化と拡大にある。弁護士の中川達也氏による改正著作権法セミナー(日本専門新聞協会主催)を聴講して、著作権というものにますます敏感であらねばならないことを再認識させられた
▼職業柄とりわけ興味を引かれたのが、著作物の「報道利用」と「引用」のくだりだ。「報道利用」では①事件を構成する著作物②事件の過程で見られ、もしくは聞かれる著作物――のいずれかに該当すれば、正当な範囲内でそれを利用できるとされる
▼①は、事件の主題となっている著作物を指し、例えば、「ピカソの絵画が落札された」という「事件」を報道する際にその絵画の写真を掲載する場合がこれにあたる。②の例としては、皇族が美術展を訪れたという「事件」を写真付きで報道する際に写真の背景に美術作品が写り込む場合などが挙げられる
▼一方の「引用」では、4つの要件をすべて満たす必要がある。4つの要件とは①主従関係(質的・量的に自分の著作物が主である)②明瞭区別性(カギ括弧で括るなど引用部分を明確にする)③出所(出典等)の明示④引用の必然性
▼講師の中川氏は講演の中で、専門新聞の場合は、ネット上の情報の利用も含めて「報道利用」より「引用」の要件を意識するほうが現実的だろうと指摘。確かに社会部や政治部とは違い、専門新聞では「報道利用」の要件を満たすケースはさほど多くない。その意味で、専門新聞としての基本的なスタンスを教えられる思いだった
▼いずれにしても著作権とは、知れば知るほど難しいというのが実感だ。具体例を挙げて説明されるとわかったような気になるが、どこまで拡大解釈できるかとなると、ケースバイケースで境界線は曖昧になる。とくに前述の「報道利用」については、要件が厳格すぎるとの声もあり、より緩やかな要件を認めるべきとする主張が少なくないようだ。

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