コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2012/07/24

しつけに地獄絵本

▼地獄の光景を生々しく描いた絵本が売れている。風濤社の「絵本 地獄」で、若い母親らが買っていくそうだ。「読んだ後、子どもが言うことを聞くようになる」からだという
▼地獄行きを命じられ、鬼が人の体を切り刻むといった恐ろしい光景を目の当たりにした主人公が、「命を粗末にしたり、人を悲しませたりしない」と行いを改める―。子どものしつけには内容が残虐すぎるのでは、とも思えるが、何度見ても泣く子もなぜか「また見たい、読んで」と言ってくるという。しかし、こうしたやり方にはどこか疑問がつきまとう
▼「恐怖を与えて、悪いことをしないという結果を求めるのは短絡的で、なぜしてはいけないかを自分で考える過程が大事」と指摘する識者もいる。子どもが成長の過程で何かの折にこうした地獄絵を目にすることで、結果的にその恐ろしさを心に刻むのとは、わけが違う。「死の怖さ」を学習するチャンスになりうるとしても、子供をしつけるのに使うのでは、やはり大人の都合優先の気がしてならない
▼この絵本に使われた地獄絵は、千葉県南房総市にある延命寺所蔵の絵巻物で、天明4年(1784)に江戸の画士・江府宗庵が製作した。ぜひ実物を見てみたいが、相手が子どもとなれば、その子の性格にも配慮すべきだろう。筆者も幼少のころ母親と映画館で観たフランケンシュタインの怪奇怪獣映画が思いのほか怖くて、ちょっとしたトラウマになった記憶がある。親はしつけでもなんでもなく、ただ子の望むまま連れて行ってくれたに過ぎないのだが。

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