コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2014/09/22

平賀源内のダヴィンチ的天分

▼先日テレビで放映された時代劇で、江戸時代中期の本草学者、平賀源内が、傷を負った鼠小僧をエレキテルで治療する場面があった。両者は生きた時代がずれるので史実とは言えないが、笹野高史演じる源内のユニークな人物像とエレキテルなる装置に興味を引かれた。源内については教科書で習った程度の知識しかなかったが、知れば知るほど、その破天荒で精力的な人物像に魅了された
▼冒頭でその肩書を本草学者と書いたが、ほかにも地質学者、蘭学者、医者、殖産事業家、戯作者、浄瑠璃作者、俳人と枚挙にいとまがない。少年時から様々な発明で周囲を驚かせ、長崎遊学後には量程器(万歩計)、磁針器(羅針盤)、火浣布(石綿)などを次々と発明。陶芸家や画家、起業家、鉱山家などの才も発揮した
▼まさにダヴィンチ的天分をしのばせる多才ぶりだが、規格外の才能ゆえか、当時の社会には受け入れられず、ときにキワモノ扱いされ、源内自身も世間に対し冷笑的な態度をとるようになった。晩年は2人を殺傷して投獄され、獄死したと伝えられる
▼ところでエレキテルとは摩擦静電気発生機で、源内は1776年にこれを長崎で手に入れ、修理・復元した。ヨーロッパでは宮廷での見世物や医療器具として使われたが、今回の時代劇でも重傷の鼠小僧に電気ショックを与え、近所の野次馬を驚かせる設定だった。エレキテルの原理については源内自身よくわかっていなかったとされる一方で、現存する装置には復元にとどまらぬ試行錯誤の跡が見られるという
▼気球や電気の研究など実用化寸前までこぎつけながら結局、実用的研究に結びつかなかったことが、後世の評価を二分する一因ともなっている。ただし杉田玄白も驚嘆した才能に疑いの余地はない
▼ちなみに土用の丑の日に鰻を食べる習慣は、夏場の売り上げ不振に悩んだ鰻屋に請われて、源内が考案した「本日土用丑の日」のキャッチコピーが元になったと言われる。日本におけるコピーライターのはしりとも評されるゆえんである。

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