コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2012/01/01

《新春》拡大版 建設業の奮闘、役割認知の年に

3月11日の東日本大震災を契機に、建設業に対する見方が大きく変わった。数年前から「公共事業は悪」とのイメージが固定化し、建設業界があまり好意的に思われない時期が続いていた。建設業者はこれまでも地域社会のために様々な活動を行い、産官学の連携による建設業のイメージアップなどにも努めてきた。しかし、一度定着してしまったイメージを払しょくするのはなかなか難しい。それが、被災直後のがれき除去や応急復旧などの作業によって、「やはり地域には建設業が必要だ」という声を聞くようになった。
建設業者自身も早急な復旧作業で地域住民などから感謝の言葉をかけられたり、「公共事業や建設業の大切さを思い知らされた」という声を聞くことで、自らの仕事の意義を再認識することになった。自分たちがやらなければ誰がやるのか──そんな心意気で復旧にあたる姿には、建設業従事者としての誇りが感じられた。

そもそも、建設業に対する悪しきイメージは、時流によってつくり上げられた、文字通りの“イメージ”にしか過ぎず、不当というべきものだった。今回の震災をきっかけに、間違ったイメージがようやく修正されたように思う。
建設業は、縁の下の力持ち的な役割が強いせいか、どちらかといえば目立ちにくく、今回の震災でもテレビに映るのは自衛隊が突出していた。建設業のアピール不足はしばしば指摘されるところだが、今後は業界全体として、その意義や重要性を外側に伝えていく努力と工夫を重ねていかなければならない。
今回は災害時にあって建設業の重要性がクローズアップされたが、平時でも地域の維持に欠かせない業界・業種であることをアピールしていく必要がある。

今回の震災では、燃料や資材、食糧などの不足が、ライフラインの復旧遅延に拍車をかけた。そうした状況下でも、各建設業団体はいち早く災害対策本部などを設置し、会員企業の被害状況の把握とともに、支援物資の輸送や資機材の調達、緊急輸送路の確保を目的とした啓開作業などの復旧工事に取りかかった。
一方で、初動期に発生した問題に対しては、全建を中心に業界団体が政府に要望を行い、応急仮設住宅の供給体制強化や災害復旧事業の査定簡素化、前金払の割合引き上げ、建築制限の緩和など、様々な制度を改善に導いた。
無論、建設業者は被災直後の応急復旧だけでなく、本格的な復旧・復興まで長期にわたり被災現場で作業を続ける存在である。業者自ら被災者でありながら、被災現場に駆けつけ、仮設道路や土のう積みなどの過酷な作業に従事しなければならないこともある。使命感なくして、生半可な気持ちでは務まるものではない。

とはいえ、震災からの復興は時間との闘いでもある。早期な復興を実現するためには、当然のことながら復旧財源の確保が課題となる。社会資本の整備更新においても、財源確保は避けて通れない。
「社会保障と税の一体改革」は十分な議論が尽くされるべきだが、毎年1兆円の増加が続く社会保障費の財源を手当てすることなく放置すれば、必要な社会資本の整備・更新費用の更なる削減にもつながる。痛みを伴うのは覚悟だが、復興も含め適切な財源確保を早急に行う時期に来ている。

ただ、建設投資は当面は回復基調が見込まれるものの、依然として低水準で、建設企業にとっては厳しい状況が続くと予想される。各企業が限られた建設投資の中で、いかに収益性、効率性の向上のための新たな経営戦略を実現していくかが今後の鍵になるだろう。
請けた工事をしっかり完成させるのは当然のことだが、新分野進出や海外展開など新たな販路拡大にも目を向けていきたい。

建設業が今回の震災を通して得た教訓は決して少なくない。公共事業が人の命を守るために極めて重要で、「防護」と「減災」に不可欠であることも、その一つだ。
さらに、地域の安全・安心を守るという「使命感」、いざというときに機動力・技術力を発揮できる「経営改善」、地元企業・住民らとの「信用・信頼」などの大切さも再認識させられた。それらすべてが、今後の建設業の貴重な財産となるに違いない。
2012年は、震災で裏付けられた建設業の役割が自らの発展を力強く後押しすると信じてやまない。

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