コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2014/05/26

人手不足

▼建設業界の人手不足が深刻化している。政府がこのほど打ち出した外国人労働者の活用策は、人手不足が背に腹はかえられない段階にまで来ていることを行政がようやく理解し始めた証しともいえる。今回の活用策はあくまで急場をしのぐ苦肉の策であり、今後は並行して外国人労働者の活用が労働力不足の抜本的な解決になるような方策の検討が望まれる
▼政府は開発途上国から受け入れる外国人技能実習制度について、在留期間を3年から最長6年に延長する方針を決めた。2020年東京五輪まで建設需要が急増し、さらなる人手不足が予想されるためで、今回の方針はいわば15年度から五輪開催までの時限措置でしかない。将来的な需要を賄うには、一定の技能を持つ外国人に門戸を広げるべきで、新たな技能検定制度の導入なども必要だろう
▼一方で安上がりな外国人労働者に頼るだけでは、建設業の未来は暗い。言葉が通じなければ事故の可能性も高くなるという不安の声も聞かれる。ましてや、特に深刻な型枠工や鉄筋工といった技能労働者の不足を外国人で賄うには無理がある。これらの職種は短期間に技能を習得するのが難しく、一人前になるまでに数年から10年はかかるといわれる
▼業界の人手不足の背景には、就職した若者が定着しない問題があり、若者が魅力を感じる業界にしていく必要性は言うまでもない。賃金が低く、将来の生活設計を描きづらい業界では若者の入職促進もままならない。昇給制度や待遇改善、キャリア形成などの仕組みを整えることが不可欠だ
▼復興事業やアベノミクス効果で工事量が増えたとはいえ、手放しでは喜べない現状がある。人手不足で工事遅れが発生し、労務費の上昇や資材の高騰などで公共工事の入札不調が続いている。東京五輪開催の1年前ぐらいから工事量が減っていくとの見方が強く、安易に人員を増やせない慎重姿勢の企業も少なくない。かつての経営危機や人員整理がトラウマとなって、業界のジレンマはそう簡単に解消されそうもない。

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